潤子先生のトークトーク 思わずホロリ・・・
潤子先生のトークトーク
子どもと語ろう
思わずホロリ・・・
「先生、勉強終わったから自由タイムでいい?」
勉強が終わったなら帰ってほしいという私に、ほんの少しだけ黒板を使いたいと懇願する。見渡せば殆ど勉強が終了に近い生徒ばかりなので安心した私は
「じゃあ十分だけね」
こう答えるが早いかパーッと四人程の女の子たちが黒板に群がる。見ればどの子もかわいい少女の絵を描き始める。それも私など到底歯が立たぬ程の出来映えである。しかも十分だけと制限されてか真剣そのものだ。机に向かっている時には決して見せない表情をそこに見る。
「学校の黒板にもそんな絵を描くの?」
「学校じゃ使わせてくれないよ。なぜかなあ」
そりゃ当たり前でしょ、黒板は少女マンガの主人公を描くためにあるんじゃないもの、と言えば、
「先生は小さい頃黒板に好きなもの書きたいと思ったことないの?」
そう言われてみると少女の頃、憧れに憧れた中原淳一氏の“丘の上に立つ美少女”の絵を黒板一面に描いてみたい衝動にかられた時期があったことが沸々と甦る。
「あったわよ。私だって・・・」
と言いながら、私も彼女たちに加わろうとすると
「うわー、先生も描くの?」
と歓声が上がる。その時、
「残念!時間切れだよ先生。十分たったもん」
とS子ちゃん。
すると一斉に彼女たちは黒板から離れた。時間制限をしたものの“もう少しいいわよ”と言いかけた言葉をぐっと呑み込んだ。満足気な表情で彼女たちが帰った後、黒板の片隅に“ありがとう”の文字を見つけて思わずホロリ。
コスモス一輪、黒板の横で風もないのに揺れた気が・・・。
潤子先生のトークトーク 少し言い過ぎたかな?
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子どもと語ろう
少し言い過ぎたかな?
中二のA君が妙にふてくされた口調で
「先生、今日英語の授業ボイコットしちゃった。だからここできちんとやってよ」
「ボイコットって?」
「授業中、ズーッと眠ってたもん。だから今度もらう通知表、たぶん最下位だよ。それだって構わないや」
「何があったか知らないけれど、授業中に眠っているなんて許せないわよ。貧しくて学校へも行けない国の子ども達が山ほどいるっていうのに・・・」
「先生は学校でのこと知らないからだよ。先公の奴、僕のこと無視しやがんの。だから授業ボイコットしてやったんだ。ザマーミロだよ」
黙って聞いていれば、たて板に水の如くとどまる所を知らない有様。
「一生懸命授業進めてんのに眠ってられたんじゃ、先生もお気の毒よ。そんな態度に出る前にどうして無視されたのか先生に話し合えばいいのに」
そんなこと出来るようなら苦労するもんか、と言いながら机の上にポンと足をのっける始末。
「悪いけど今日は帰りなさい。私もそんな態度の君に教えることは何もないから」
テンションが上がった私に驚きを隠せない様子の彼。
「君のお母さん可哀想よ。学校でも塾でも真面目に勉強しているって思ってらっしゃるのに。君がそういう態度見せるとお母さんがその程度の躾しかしてらっしゃらないのかと思っちゃうもの」
ふてくされながらも急に口をつぐんで私に背をむけること一時間余り。
「ありがとうございました。次の時、二回分やるから・・・」
そういい残して去る彼の後ろ姿がなぜか雄々しくみえた。少しお説教が過ぎたかな?
潤子先生のトークトーク ごめんね・・・
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子どもと語ろう
ごめんね・・・
一番乗りの小二のA君。スタスタと私の横にやって来てかばんの中から用具を取り出してスタンバイ。
「あれ?今日はお話デーじゃないの?」
「今日は何も話すことないもん」
私は少し期待外れだった。
“だって先回、教室に入って来るなり忙しがる私の後ろをまとわりつくようにして話したいことがあるって言ってたじゃない。他の子の邪魔になるから次の時ちゃんと聞いてあげるって約束したじゃない。今日はその話が聞けると思って楽しみにしてたのに・・・”
私は不満げな言葉を彼にぶつける。
「もういいよ。あの日に聞いて欲しいことだったのに聞いてくれなかったもん」
「誰もいない今じゃダメ?」
頑強そうに“うん”と首をたてに振りそのまま黙りこくってしまった。
そういえばあの時、耳を傾けなかった私にくやし涙を出し、そっと袖口で拭いていた。忙しさの余り、それを彼のわがままだと見て勉強をすることを強いてしまった。あの時どんなに彼が傷ついていたろう。どんなに私をうらめしく思ったろう。
ただひたすら後悔の念にひたりつつA君の後ろ姿を見つめる。
“その小さな後ろ姿は完璧に私への信頼感を失っている。どうしたら取り戻せるのだろう。”
やりきれない焦燥の念にかられる。
その時、この重々しい空気を吹き飛ばすような元気な声でO君とM君がやって来た。
よし、これからは話を聞いて欲しいという子がいたら全員鉛筆を持つ手を休ませみんなで聞いてあげよう。うれしいことも悲しいことも悔しいことも、みんなで耳を傾けて話し手の子を盛り上げよう。
そう思ったら急に気持ちが軽くなってきた。ただA君にだけは“ごめんね”とそっと呟く。
潤子先生のトークトーク おさむギャラリー特集
潤子先生のトークトーク
おさむギャラリー特集
今回は、曼荼羅寺のふじと、園原の花桃です。







潤子先生のトークトーク 「えっ、君が?」
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子どもと語ろう
「えっ、君が?」
七年ぶりにひょっこりと訪ねて来てくれたM君。
「大阪の吉本の学校を卒業してトリオを組み、ときどき劇場に出させてもらってるんですよ」
これには驚いた。ただ唖然とするばかり。
「だって君、無口で恥ずかしがり屋でとても吉本なんかに・・・」
「でしょ?だから人ってわかんないもんですよね」
言いながらケラケラ笑う。
「君はお父さんの仕事の後継者になる子だと思ってたから」
「とんでもない方向に進路変えちゃったけど、でも気持ちよく許してくれた両親に、感謝してるんですよ」
大阪に飛び込んで今日までに味わった喜怒哀楽を一つ一つかみしめるようにして話す彼に泣き笑いで耳を傾け、無性にうれしかった。
「あの時の少年がねぇ・・・」
幾度もくり返すこの私に
「大成したら本気で喜んでくださいよ」
と、目を輝かす。
私を含めて世の大人たちは一つのことを伸ばす教育よりも、パーフェクト人間を育成しがちである。そんな中で彼のように思ってもみない方向を目がけて突き進んでいる子が私の傍にいたなんて・・・。なんだか妙に嬉しかった。
「たとえ大成しなくてもいいと思っています。それをバネにして次の目標に向かいますから」
胸を張って帰った彼の後ろ姿に贈る言葉が見当たらなかった。
後日、彼のマンションに小包を贈った。ラーメン、コーヒー缶、レトルト食品etc・・・。
稽古とバイトに疲れて帰る彼の口を、そっと癒してくれればと・・・。
